2013年11月27日

7.鴨撃ち鹿撃ちの最適弾粒サイズ(狩猟大全集ショットガン編)

狩猟読本によればカモ撃ちには3~4号、カモの近射でも5~6号、遠射にはBB~2号が最適となっています。散弾銃の総エネルギーは相当なもので2000ft・lbs級のエネルギーを持ってますが、多くのバラ弾に分けられますので1粒としては僅かなパワーしかありません。

これを補うのがパターンであり、複数被弾副次効果なのです。
大粒散弾の場合は1粒のエネルギーの大きいのですが、複数効果はあまり期待できません。
もう少し具体的に言えば対象はカルガモクラスとしてBBの1粒は空気銃並みのエネルギーがありますから良い所に1個当てればトンコロです。しかしエアーライフルハンターの方は分かっておられるのですが、少し外れると遥か彼方まで飛んで行ってしまいます。

1粒がまぐれで良い所にヒットした場合もありますが、撃墜には上半身に3粒以上の命中が必要です。筆者は一般の方の100倍近くも鴨を撃つ機会に恵まれ、忍びやデコイ撃ち、害鳥駆除等など約5万発以上の実戦経験を持っています。
その結果としてカルガモの遠射であっても7.5号が圧倒的に有利であると思っています。

これを数値的に解明して行きたいと思います。
距離と各号数の散弾が鳥に何発命中するのか一覧表にまとめてみました。カモの有効被弾面積は10cm直径としました。これは上半身に当たらないと早期に落ちない為であります。

      各号数の散弾が直径10cmに何粒当たるかの一覧表
散弾号数  直径  何粒/32g 40ヤードフル 40ヤードインプ 50ヤードフル  50ヤードインプ  備考
 BB     4.5     59    0.71     0.51     0.50     0.34
 1      4.0     85    1.02     0.73     0.71     0.48
 2      3.8    102    1.23     0.88     0.86     0.58
 3      3.5    126    1.52     1.08     1.07     0.71
 4      3.3    157    1.89     1.35     1.32     0.91
 5      3.0    200    2.41     1.72     1.68     1.14
 6      2.8    259    3.12     2.23     2.19     1.47
 7      2.5    344    4.14     2.97     2.90     1.96
 7.5     2.4    386    4.65     3.32     3.25     2.20 
 8      2.2    547    5.66     4.05     3.97     2.67  パワー不足
 9      2.0    672    8.09     5.78     5.67     3.82  パワー不足
          赤色部は有効3粒以上のカルガモ撃墜条件を満たす。

1.インプシリンダーの限界
一般に狩猟に最も多く使われているのは26インチインプシリンダーの銃身ですが、インプの場合は7.5号をもってしても40ヤード(36m)が限界なのです。この時4号はたった1.3粒しか当たりません。これで落ちないとは言いませんが確率的には明らかに悪くなる筈です。

2.フルチョークの限界
遠射が目的のフルチョークですから50ヤード(45m)をメインに比較します。7.5号が3.25粒当たってます。ところが6号では2.19粒しか当たりません。毎度申し上げる様に複数被弾副次効果ですから2粒と3粒は4と9の差になりますので1粒が2倍のパワーを持った大粒散弾でも逆転が起こるのです。

小粒散弾がパワー不足と評価されがちな原因にリードの不足があります。粒が小さくなると弾速の途中低下が大きくなり普通に狙うとリードが不足します。その結果本来のパターンの濃い所ではなく薄い所がヒットします。これではきれいに落ちる筈もありません。
これも経験的に言えば6号で撃った時の遠射に比べてパターン半分弱位のリードを増すと鴨が7.5号のパターンの中心に飛び込んで来ます。

散弾は弾速が遅い為、リードを取ってそこを狙って射撃すると言うよりも弾幕を空中に送りそこに鴨を飛び込ませると言った方が正しいのかも知れません。
小粒散弾になればなるほどこの傾向が高くなります。散弾の号数によってリードが変わると言う事を頭に入れておかなくてはなりません。

3.スチール装弾の場合
スチール装弾の場合も小粒散弾と同様の事が言えます。弾粒が鉛に比べて軽いので途中弾速低下がかなり大きいのです。遠射の場合、やはりパターンの半分或いはもう少しリードを大きく取らないとパターンの中心にカモを飛び込ませる事が出来ません。
リードの取り方は何とかの一つ覚え的では済まないのです。

もう一つスチール装弾の特性があります。それは同じチョークで撃つとパターンがやや小さく(正確にはパターンの濃い所が中心寄りの狭い所に集中する)なりますから上手く狙って且つリードも上手く合わせないとパターンの濃い所にカモを飛び込ませられなのです。

小粒散弾やスチール散弾が非力だと嘆いておられる方は全てこのリードが合っていないのです。
筆者の経験ではリードさえ合わせれば小粒散弾の方が命中する粒数が多く有効度が高いのは本稿で述べた通りですが、スティール散弾の場合も同じ粒の大きさであれば粒数が約1.5倍入っているスチール装弾の方が近射でも遠射でも良く墜ちます。

これらは数千発をメーカーから無償供与を受け、実戦テストの結果分かった事です。
結論的に申しますと下記の様になります。
  1.スチール装弾は途中弾速低下が大きくリードを大きく取らないと命中しない。
  2.パターンの有効部分が狭い為にリードを合わせるのに通常より高い精度が必要である。
  3.これらを使いこなすならばスチール装弾は近射でも遠射でも鉛弾より良く墜ちる。

4.鹿撃ちにこれを適用すると。(次期狩猟大全集より)

鹿の急所は直径30cm、これに殺傷能力の十分ある1粒がヒットすればOKと言う考え方もありますが、鹿や猪の大物にも散弾を使い複数被弾副次効果が期待出来ます。
直径30cmは表の直径10cmに比べて9倍の面積です。粒数と共に比例計算しました。

散弾号数 直径 粒数/32g 40ヤードフル 40ヤードインプ 50ヤードフル 50ヤードインプ  備考
  BB  4.5mm  59    0.71     0.51     0.50     0.34  直径10cm的
  BB    4.5    59    6.39     4.59     4.50     3.06  直径30cm的
  OO   8.4    09    0.97     0.70     0.67     0.47  直径30cm的
  000   9.1    06    0.65     0.47     0.46     0.31  直径30cm的
4号バック   6.1    27    2.92     2.10     2.06     1.40  直径30cm的

大粒弾は粒数が少なくあまり綺麗なパターンにはなりませんが、確率的には9粒のOOバックでフルチョークでも40ydの36mで0.97発しか当たりません。つまり36m以下であるなら9粒弾をフルチョーク以上の絞ったチョークであるターキーチョーク等で撃てば上半身に3発程度、内1発は急所付近に入る事から捕獲の可能性は高いと言える事になります。

4号バックショットになりますと50ydの45mでもフルチョークならば急所付近に2粒強、上半身には6粒ほど命中する事になり捕獲に必要な条件をバッチリ満たす事になります。
9粒より粒数の少ない弾は余程相性の良いきついチョークで撃たない限りマグレ期待しか出来ないと言う事になります。

鳥撃ち用のBB弾は比較の為に乗せましたが、粒数的には倒せる要件を満たしても弾の侵貫量が不足し、近距離しか使えません。

鹿撃ちにはノーマルスラグ弾は不向きです。それは普通の射手が撃つと50mで直径30cmに入りません。連射すればますます当たりません。
しかしフルチョーク以上の絞ったチョークと粒数の多い4号バックショットは普通のバード感覚で撃っても又連射しても相当な確率で命中し総合的に十分な有効弾となり得ます。

しかし4号バックは50mまで有効ですが、その後は急速に無力化します。
50mを超えますとサボットスラグで射撃の腕を上げる以外に有効な方法はなくなります。

我がスクールには2009年レベルに50mで5cmにまとめられるサボットスラグの生徒が3名おり、累計5~10頭程度の撃墜スコアをそれぞれ全員が持っています。
サボットスラグは150mまでの実用性能を持っているのですが、それだけの腕と撃墜経験を持っていてもまだ100mの鹿を倒した生徒は一人もおりません。意外と難しいのです。

更に2年後の2011年、3名とも120mの鹿を倒す事に成功しました。
しかしまだ150mは誰も成功しておりませんが、あと数年で達成出来そうな雰囲気です。

2012年、サボットスラグ生徒により150mと190mで命中弾が出ました。

注意) OOB等の大粒散弾とフルチョークの組合わせを禁止している銃メーカーもある様です。






同じカテゴリー(ハンティング)の記事画像
御挨拶
狩猟大全集入門編
2.鴨猟への招待。(狩猟大全集ショットガン編より)
3.鹿猟への招待。(狩猟大全集ショットガン編より)
4.各種散弾銃の特徴と筆者の愛銃。(狩猟大全集チャレンジ編)
5.各種狩猟の紹介。(狩猟大全集ショットガン編より)
同じカテゴリー(ハンティング)の記事
 御挨拶 (2014-03-13 09:59)
 狩猟大全集入門編 (2014-02-09 17:27)
 狩猟大全集 入門編 目次。 (2013-11-27 16:05)
 1.はじめに。2005年スポーツガンガイドブックより (リトルケン作品) (2013-11-27 16:03)
 2.鴨猟への招待。(狩猟大全集ショットガン編より) (2013-11-27 16:01)
 3.鹿猟への招待。(狩猟大全集ショットガン編より) (2013-11-27 15:59)

Posted by little-ken  at 15:53 │ハンティング