2013年11月27日

12.プロハンターを志す人に。

ハンターは減る一方、鹿は増える一方、昨今は駆除と狩猟が半々で計約15万頭前後の
エゾ鹿が捕獲されています。
筆者がエゾ鹿猟を始めた1993年頃の捕獲データでは駆除はまだ局所短期限定、メスは禁猟、
狩猟期間は2ケ月間 でした。ハンター数は北海道13000人、本州から7000人、計2万人の
ハンターでエゾ鹿を約2万頭の捕獲でした。
従ってこの頃では駆除で収入を得ると言う考えは成立しません。

やがて20年が過ぎ駆除は増え今や1年中、メスも解禁され捕獲定数の増加も今は無限、
狩猟期間も2ヶ月が今や6ヶ月、ハンターの著しい高齢化と減少で今や本州からのハンターを
入れても半分の1万人程度、しかも70%が戦力外の高齢、その結果捕獲は2万頭から
15万頭に増えましたが、それでも自然増殖分を獲り切れていません。

   エゾ鹿を対象とするならプロハンターの道は有り得ます
鹿の駆除は本州鹿でも同様の大きな被害があり駆除の需要もあるのですが、なぜエゾ鹿かと
言うとそれは平地の牧草地に出現しますから本州鹿の4倍程度と抜群の捕獲効率、
年間1000頭の捕獲があわよくば可能なのです。
そして更に1頭当たりの体重が2倍以上、その美味しさも比較にならない程エゾ鹿が優れて
いる、つまり商品価値が数倍高いにも拘らず、数倍捕獲頭数を上げ易いのです。

鹿の捕獲方法は銃以外にも罠や大規模捕獲施設ありますが、戦力外高齢ハンターが主体の
銃による捕獲と比べても一桁効率が悪く、罠の類が主流となる可能性はありません。
今や腕の良い名人級の銃の依る捕獲は戦力外ハンターの軽く10倍以上、その特殊技術は今後
も益々重宝される事と思われ、エゾ鹿を対象としたプロハンターへの道は金銭的にはかなり
有望と言えます。

しかしその必要とされる条件は決して甘い物ではありません。
昨今では鹿の学習が進み腕が3流では出会いを得る事もままならない状態です。
従って鹿の生態にかなり精通しており、射撃技術も精度だけではなく素速さも要求され、
100㎏を超えるエゾ鹿を回収する体力も必要、更に鹿はどんどん進化しますから進化出来る
人間でなければなりません。

そして駆除は今の制度では地元市町村役場が握っており、地元猟友会がそのまま格上げに
なった特殊或いは指定 法人が実権を握っていますから、この駆除隊員メンバーに入れて
もらう必要があります。

鹿の生態にも精通し、腕が良く、且つ体力もあれば、後述の排除され様とした2名の様に
500~1000万円の年収も可能ですが、その状態まで美術レベルを上げるには良いセンス
+修行10年間が必要かと思います。

普通の趣味のハンターが定年後に移住し、年金+駆除でお小使いと言う北海道移住生活を
夢見る事は可能か?
それにチャレンジした知り合いが2名いましたが、共に2年目で早々と挫折しました。
猟友会には無料ボランティアなら入れてもらえ駆除にも参加出来ますが、翌年独立した瞬間
から敵視され効果は上げられないのです。

    駆除の利権争い
ハンターは減少且つ高齢化で超不足の筈、エゾ鹿はたくさんおり被害は甚大であり、農家或い
は日本国家としてはたくさん駆除してもらいたい筈、本来は一人でもハンターが欲しい筈です。
ならば定年後の趣味ハンターの移住でも歓迎され、そこに移住した人がもし若くて能力の高い
ハンターであるならば、それは北海道にとって至宝になる筈ですがですが、ここに地元猟友会
の利権争いが絡みます。

特に深刻なのは捕獲能力が低下している戦力外の地元高齢ハンターが、自分の利権を護る為
によそ者ハンターを 全て追い払おう、或いは上げ足を取ってパクられる様に仕向ける所に重大
な問題があります。

エゾ鹿1頭は1~数万円になる様で、戦力外クラスでも年間に数百万円の収入になるのですが、
駆除関係者が少ないほど自分の取り分が増える構造で、地元猟友会の派閥同士でも足の
引っ張り合いがある程なのです。
ハンターが増えれば取り分が減少する方向となり、若い有能なハンターが来れば激減の
可能性が大、その為に後述の様に全力で潰しに掛かります。
移住者ハンターはそう言う所に移住しようと言うのですからかなり上手く立ち廻らなければ
なりません。

    移住者潰し
次の2例は実際にあった話です。参考にして下さい。 最初の例は1995年、筆者と全く同じ日
にエゾ鹿猟の単独猟を始めた東京のT氏、筆者より15歳ほど若い点だけが違います。往復が
同じフェリーであっただけではなく、以後何度も顔を合わせている内に何時しか友人になりました。

2010年頃にとりあえず単身移住、住民票も移し地元猟友会にも入り駆除を始め、数年後には
年間500万円以上の収入の見通しも付き、翌年には家族も呼び寄せるつもりでした。

本来で言えば若くて腕も立つのですから北海道に取ってはこの上ない程の至宝なのですが、
腕が上がるにつれ戦力外の地元猟友会に取っては大きな脅威となり、とうとう排除する事に
決まってしまいました。
詳しい内容は不明ですが、地元猟友会の顔馴染みの人に共猟を持ち掛けられ、そして発砲
を奨められ撃ちました。厳密には違法発砲、これは地元同士でも日常茶飯事なのですが、
上げ足を取られ通報され、そしてパクられました。

鹿は夜行性ですが日の出前や日没は撃てないのが現在の法律です。
駆除の成果を上げる事を優先するならば、現在の狩猟法では大きな問題があります。
安全である限りと言う前提は付きますが、鹿を減らしたいのであれば法律の改正が必要です。

また地元の戦力外に利権を与えるのでそう言う問題も起こるのですから、彼らにそう言う利権を
与えない様な法律制度にしなければなりません。
よそ者排除はあからさまに自らが捕獲出来なくなる直前まで続きます。

今は夜間駆除のライセンスにも挑戦出来ますが駆除隊員の資格が必要、これは50mで数cm
の的に全弾命中を要求されますから、かなり限られた上級技量の持ち主以外は合格出来ません。
それに対し駆除隊員或いはその下の駆除従事者は誰でもなれ、且つ技能講習も免除、
この間違った制度のお陰で戦力外ハンターは何時までも堂々と存在出来るのです。

駆除のライセンスの難易度を一般の狩猟者の技能講習と夜間駆除ライセンスの中間程度に
設定すれば戦力外のハンターはいなくなり、全体的に見て捕獲効率も上がり、弊害も一気に
少なくなると思われます。

極端な言い方をすれば現状では地元高齢猟友会員にとってエゾ鹿は彼らの飯の種ですから、
彼らは自分達の資源を保護し捕獲に本腰を入れず(元々捕獲能力はかなり低い)、政府は
何時までも永久に補助金交付をしなければならなくなります。
またそう言う体制では次世代を担う有能なハンターも本項のT氏の様に片っ端から潰されて
しまいます。

裁判でも状況的には極めて同情するが、現行法に照らし合わせて違法行為が無くなる訳では
ないとして勝てず、銃を辞めなければならなくなりました。
至宝の名人ハンターの移住計画も潰され、日本としては大変な損失となりました。

    猟友会の除名処分
こうして非常に好ましくない事に現行法によって北海道の戦力外地元猟友会の利権は
守られてしまいました。 
もう1件は筆者の尊敬する本物ハンター、こちらは上手く決着出来た数少ない例です。
北海道離島出身で今は道東のT村のプロハンター&ガイドをしているK氏です。
すでに移住して20年クラスですから地元猟友会員のベテランです。

一般的な猟友会員は300頭/年程度ですが、凄腕の彼は1000頭/年、ここでも彼が居なく
すれば他のハンターの取り分が増えるとあって、上げ足でパクろうとしましたが果たせず、
とうとう難癖を付けて地元猟友会を除名処分としました。

この辺までは彼のHPに出ていた内容です。それで駆除が出来なくなり死活問題となりましたが、
こちらは裁判で地元猟友会が負けてK氏に約1千万円の損害賠償金を支払う事になったそうで、
これは先のT氏から聞いた話です。

     残滓処理でパクられた筆者
筆者が残滓で上げ足を取られてパクられた件は狩猟シーズンですが、似た様な背景で
地元駆除の利権を護る為、よそ者ハンターを追い出しで上げ足を取られたと言う感じです。
筆者の結果は検察で不起訴となり、それで終わりかと思いましたら環境省側で狩猟免許の
半年間の停止、その為に2012年のエゾ鹿猟を休む事になった次第です。

当時はまだ処理場搬入も表向きに設定されたと言う程度、筆者の残滓も決して放置した訳
ではなく、その当時としては平均値的以上を十分に満足した処置レベルでした。

もちろん厳密に言えば違法であり、以後は馬鹿正直に全量回収して処理場に運んでいますが、
現実的にはまだまだ誰も守っていない様子です。その根拠はスクールのある紋別郡でもその
数年後には処理場が開設され、3年間に筆者は100頭近く搬入しましたが、その間に他の
搬入者に1度も会った事が無く、そこに向かう車両も見た試しが無いのです。

エゾ鹿のプロハンターになる為にはそう言った地元とのハードルを上手く乗り越えなくては
可能性はありません。
その上手く立ち回る方法としては将来制度が変わるまで、或いは彼らが銃を卒業するまで、
現状の地元利権者である戦力外ハンター達の収入が現状より上がる手法を提案しなければ
仲間に入れてもらえないと思います。

そうは言う物の捕獲技術の高いハンターは超貴重ですから今後の需要は高まる一方です。
戦力外ハンターの行動もあと10年で自然消滅ですからそれまで頑張りましょう。

    筆者地元の害鳥駆除の話
筆者地元の駆除のその後ですが、エゾ鹿の残滓放置でパクられ地元駆除の2012~2015年
の4年間を自粛しました。
2016年に駆除再開の依頼で久しぶりに参加して驚きました。銃卒業の項にもあります様に
1980年代のMax.600匹、毎回数百匹を捕獲していた時の往年のメンバーは筆者だけとなり、
参加しても撃たない(獲れない)老友組が半分、そして若いと言っても50前後の狩猟を経験して
いないので狩猟能力のない射撃組ばかりとなっておりました。

捕獲数は筆者1人で全体の60%以上を捕獲しても往年の一桁ダウン以下、何時の間にか
もう殆ど獲れない駆除集団になり下がっていました。
筆者がいなかった数年間は名目だけの駆除で税金ドロボーと言った程度だったと思います。

これが全国の何処であっても大同小異と言った感じの様です。バレーボールの項でお話し
しました様に60歳を超えるとまとも反応その物がもう難しくなっており、もう1つは元々射撃場
の技術は実戦捕獲の役に立たないのです。

駆除と言う捕獲行為は通常の狩猟より民家に近い場所で行う事が多くなり、1980年代の駆除
の素晴らしい捕獲数の影には7.5号弾の流れ弾ですから重大な被害にはならなかった物の、
実は相当数のマイナー事故がありました。

筆者以外はほぼ全員が起こし、当時のそれは立件されませんでしたが、普通のハンターは
全員が銃を構えてから狙い込みますので、構えたら獲物以外は見えなくなってしまい、
流れ弾事故や誤射等々は避けられない構造にあります。

筆者は周りを見て直前まで安全を確認した上の、スナップショット瞬時撃ちますから事故は
起きません。そう言った背景からも駆除は特別の高い能力を持った人を更に特別に訓練し、
市街地でも僅かな安全な隙間が読める様な特別の訓練を受けた専門の人達だけによって、
現行銃刀法や狩猟法の枠外で行うべきだと筆者は考えます。

別件ですが、赤鹿駆除のNZでは国立駆除ハンター養成学校を設立、それでも効果は余り
上がらずの20年間でした。効果が上がったのは運動性の良い小型タービンヘリの出現後に
ヘリからの空中射撃を昼夜問わずOKにする等、法的な体制を変えてから35年程で目的を
達成し、国立の駆除ハンター養成学校はその役目を終えました。




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Posted by little-ken  at 15:34 │ハンティング