2013年11月27日

6.散弾とスラグ弾を如何に当てるか(狩猟大全集チャレンジ編)

実戦に於ける射撃の重要度は5%以下と他項でも書きましたが、これは確かにその通りです。
高級銃を持っていても幾ら当てる腕があっても獲物が居なければどうしようもありません。
しかし一方で95%まで上手く進行していても肝心の最後の射撃が決まらなければ勝利はありません。そしてその過程では発砲準備動作が非常に重要である事も随所で触れました。

1.見えている情報はリアルタイムではなく相当古い
ここでは引き金を引くその瞬間に付いてもう一度考えてみたいと思っております。
目標を見て、照準し、決断し、引き金を引く指令を出します。そして引き金が引かれハンマーが落ち、火薬が燃焼し、弾が加速放出されます。

これらは一瞬の内に進行している様に見えますが、意外にも時間が掛かっているのです。
まず目標を見ると言う事を解析します。
光の速さは30万km/sとベラボーに速いので無視出来ます。しかし網膜が光情報に反応し、データが脳に送られ、映像として認識されるには相当な時間が必要です。

見ている情報が意外に古い事を実証する例がライフル銃の狩猟にありますので紹介します。
鹿のウォーキング射撃です。ゆっくり歩いている鹿の急所を狙って銃を止めて撃つと何故かケツの少し後方に着弾します。

鹿の速度を3.6km/h(1m/s)とし、弾の速度は800m/s、射撃距離は80mとします。これらは計算を容易にする為ですが実際もこれに殆んど近くなっております。
鹿に命中するまでの弾の飛行時間は0.1秒、この間に鹿はたった10cmしか移動しません。

見ている情報が全くのリアルタイムでは無いまでもそれほど遅くないならば1mも弾着はズレません。
腹の真ん中かせめて後ろ足に当たる筈ですが、実際は殆んどがケツをかすめそうもない位の後方に着弾します。これは何度も何度もほぼ同じ結果を見ていますから普通に撃つとそうなるんだと断言出来ます。この弾が後方に1mも外れる事実から、今見ている情報の古さは全て合わせて逆算すると約1秒と言う結論になりました。

これを当てる為には1秒分の前を撃つか、もう一つはリードした所定の狙点に間もなく入るのを予測して撃てば胴体になら命中します。最も良いのは銃の追尾を止めずに撃つ事で、そうすれば必要リードは弾の飛行時間分の10cmだけですからこの条件下ならリードは無視して撃っても急所付近に必ず命中します。

2.散弾銃の移動標的射撃
この時間遅れは静止目標が相手の時にはそれ程問題にはなりませんが、動目標に対しては全てこの考えがベースにないと絶対に命中させる事は出来ません。
目標を追い掛け、追い越した瞬間または絶妙な遅れ時間後に引き金を引く射法がスイング射法です。実戦やトラップ射撃に向いている射法と思います。私もこのスイング射法でもっぱら撃っておりますが、この射法が良いと思っている点は次の通りです。

 1.目標を追い越した瞬間に意識が集中しますので引き止りが普通より起き難い事です。
 2.同時に追い越しだけに集中すれば目標との位置関係を再度見たくなる迷い射撃に
   陥らない可能性も高い事です。
 3.射撃距離や目標の移動方向や移動速度の違いに対し、リードの過不足を余り意識
   しないでも命中する点です。ややいい加減な射撃に見えますが、コツさえ掴めば結構
   良い加減の射撃になります。

移動標的を当てる絶対的条件はスイングを止めない事です。
言葉では簡単ですが、実行は中々難しく巷の90%以上は引き止り射撃です。

銃身長さを変えるとスイングが変わってリードが合わなくなり失中率が増します。
従ってチョークは射撃距離に合わせて換えるのは良い方法と思いますが、銃身長を変えずに同じ銃身にインナーチョークの方がスイングバランスが変わらずに良好です。

3.ライフルやスラグ銃で静止目標射撃
静止時は時間遅れの問題はありませんが、射撃自体がかなり精密でなければ命中しません。
この場合の精密射撃を阻害する要因は3つあります。
第1の原因は体が反動を嫌って発射直前に身構え過ぎて照準がずれて発射となるのがフリンチング、2番目は引き金を引く時に銃がぶれてしまうのがガク引きです。
3番目が揺れる銃を目標を通るタイミングに引き金を落とせないと言う技術不足です。

サボットスラグ銃の精度や遠射性能はライフル銃には至りませんが、150m以内の鹿を倒す為の性能を有しており、50m射撃では数十mm(ワンホール崩れ)に弾がまとまります。
しかし現実にはこれが出せる腕前の人はほんの一握りで、一般の初心者が50mで撃つと桁違いの50cm角の標的紙(本来は100m用)一杯に弾着が散らばってしまいます。下手するとこの標的紙から外れてしまう事も珍しくありません。実戦では更に3~10倍に弾着がバラ付きますからこれでは鹿の捕獲は絶望的です。

銃と弾は基本的には当たる性能を持っているのですから命中させる為の理論は簡単です。
とにかく余計な力を入れずに、銃だけに撃たせれば良いのです。
余計な力を入れるから当たらなくなっているのです。
秘訣は銃をなるべく持たず(左手)、なるべく握らず(右手)、
なるべく当てず(肩)、なるべく引かず(人差し指)で撃つのが理想です。

右手はグリップを握り、且つ引き金を引く重要な働きをします。
右手の構造として引き金を引く人差し指と中指はかなり連動しており、引き金を引くと銃が動いてしまいます。それを防ぐ為グリップは主に小指で握り薬指を当てる程度とし、中指を完全に遊ばせます
引き金は撃発させる為の最低分の力とストロークを十分把握した上で、人差し指の最先端で一気にトリガーを引きます

実はこの私もスラグ射撃を初めて行った時は50mで50cmの的紙からはみ出しかねない極めて普通のダメ寄りの射手でした。
何年も掛けてやっと全弾が10cmに入る様になりました。
その後更に10年以上も掛けて試行錯誤し得られた結論が
         持たず(左手)、握らず(右手)、当てず(肩)、引かず(人差し指) でした。
私はその頃ライフルでしたがこの方法で150mワンホールも300mの遠射も可能になりました。

人によって上手くなるまでにはかなり差(3~10年位)がありますが、諦めなければ必ず全員がクリア出来ると思います。何故ならば あなたの銃は当る性能を持っている からです。
(銃の製造が2000年以前の場合は1部に命中精度があまり高くない銃もあります。)







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Posted by little-ken  at 15:55 │ハンティング